METROPOLITAN MANDOLIN ORCHESTRA

第13回演奏会を語る!

第13回演奏会は今まで以上の充実したプログラムをご用意いたしました。パンフレットに書ききれなかった話題をこちらでご案内させていただきます。

 

☆南聡/彩色計画VI op.17-6

演奏時間 約10分
編成 弦5部(Mn1、Mn2、Md、Gt、Ml)
楽譜 未出版。作曲者自筆譜より、メトロポリタンマンドリンオーケストラが作成・校訂(スコアおよびパート譜)。

今年の演奏会の注目の1曲。初演依頼、10年ぶりの再演になるのだそうです。

 

現代日本音楽において第一線で活躍する作曲家が書いた、マンドリン・オーケストラの作品を捜している中で見つかった作品です。なかなか再演されない理由は、おそらく素晴らしく演奏が難しいから。特殊奏法は多いし、調性を持った聴きやすいメロディーラインが有るわけではありません。しかし、素敵な響きを聴かせてくれるスコアなのです。マンドロン・チェロやベースを欠く編成なのでちょっと迷いはしましたが、こういった曲はMETの十八番にしなくては。

 

前半部分は、冒頭から始まる2ndマンドリンの16分音符のリズムが中心になります。このリズムは弦を箸で叩いて奏され、16分音符と16分休符がたいへんな意味を持っています。このリズムの上に、弦をピックで擦り上げる、バルトークピチカート、ハーモニクスなどの楽音が重なっていきます。やがて音符と休符が逆転したリズムが明らかになって、このいわば「陽」と「影」のリズムが楽曲の骨組みを作っているのです。テーマは色の濃淡といったところなのでしょう。

 

最後のコーダで突如ワルツの断片が出てくるのですが、これまた飄々としていて、なんともオシャレです。とても凝った作曲技法でできた音楽なので細かい解説をすると長くなるのですが、だいたいこの程度でざくっと聴いていただいても充分楽しいですよ。とても美しい響きを持った音楽だと、私は思っています。マンドリン・オーケストラは、こんなにたくさんの音色を持っていることに驚かせてくれる曲です。

 

音楽によって求められている音色や弾き方っていうものが、必ずあるはずなんです。マンドリンの美しい音色というもののイメージに、どんな音楽でもあてはめていることはありませんか?そう、固い音や、ちょっとびっくりするようなバリバリいう音も、もっといえば汚いと思う音だって、楽曲が求めているならきちんと出せなければ、演奏家としては足らないのではないか、と思う今日この頃なのでした。


☆アレクサンドル・スクリャービン(笹崎譲編曲)/夢 op.24

 

わきあがる夢をイメージさせる、スクリャービンの比較的初期の作品から演奏会の幕をあけます。


☆モーリス・ラヴェル(笹崎譲編曲)/「鏡」より「鐘の谷」「道化師の朝の歌」

 

ラヴェルのピアノ曲集「鏡」は、極めて特徴的な音楽が並びます。「鐘の谷」はラヴェルのピアノ曲らしい、響きが重要なテーマになった作品です。バリの昼時にあちらこちらで鳴り始めた教会の鐘にインスピレーションされたといいますから、たいへん幻想的でもあります。編曲も思いっきり凝っていて、マンドリン・オーケストラとは思えない、多種多様な打楽器が並びます。大・小2つのタムタム(支那ドラ)、2オクターブそろったアンティーク・シンバルなんて、METのステージじゃないと見られませんよ。(笑)

 

「道化師の朝の歌」は、言うまでもない有名曲ですね。冒頭のピチカートの音色から、皆さんをびっくりさせることができるのではと、思っています。音楽が求めているのなら、私たちはどんな奏法でも試していきたいのです。このとても乾いた響きの中から、ラヴェルのスペイン趣味にあふれたテーマが浮き上がるところは、ぞくぞくします。


☆クロード・ドビュッシー(笹崎譲編曲)/「映像(第2集)」より「そして月は廃寺に沈む」

 

「映像」には2つのピアノ曲集と、管弦楽のための組曲があり、いずれも印象主義といわれるドビュッシーの代表作です。彼の和声もまた独特なのですが、このマンドリン・オーケストラのための編曲はたいへん実験的に仕上げられました。何しろマンドリンが弾くところが少ない(笑)。しかし、まぎれもなくドビュッシーの音色が聞こえてきます。大・中・小の3つのトライアングルが、独特の風情をかもし出しています。


☆モーリス・ラヴェル(笹崎譲編曲)/バレエ音楽「マ・メール・ロワ」

 

曲目解説のページに、詳しいことは書きましたのでそちらを参考にしていただければと思います。

 

何しろ私は、この作品が大好きなのです。前編ともラヴェルの全音階的な旋律が、満載です。もうちょっと言えば、教会旋法が中心になっているのですね。単なる子供のピアノ連弾曲に終わっていない点には、こんな特徴もあるのです。だから、楽器が変わっても、魅力が色あせない点もあるのではと、私は思っています。

 

編曲もたいへん充実しています。ステージの遠近感も充分に使っていて、場面転換に重要な役割を果たすファンファーレは、舞台のあちらこちらから立体的に響くことを感じていただけると思います。

 

終曲の「妖精の園」は、この世の中でもっとも感動的な音楽だと思っています。カザルスホールいっぱいに、オクターブのグリッサンドを響かせたいと思っています。