METROPOLITAN MANDOLIN ORCHESTRA

第23回演奏会

1.日時

 

2012年9月17日(月・祝) 13:30開場 14:00開演

 

2.場所

 

紀尾井ホール

 

3.指揮者

 

小出 雄聖

 

4.曲目

 

○アルフレード・カセッラ(笹崎譲編曲)/「小管弦楽のためのセレナード」より「カヴァティーナ」

○セザール・フランク(笹崎譲編曲)/交響詩「プシュケ」より第4曲「プシュケとエロス」

○湯浅 譲二/「サーカス・ヴァリエーション(1954)」より (委嘱作品・初演)

○ジャン・シベリウス(笹崎譲編曲)/付随音楽「クオレマ(死)」より「鶴のいる情景」、組曲「ペレアスとメリザンド」より

 

5.楽曲解説

 

アルフレード・カセッラ(1883~1947)

 

「小管弦楽のためのセレナード」より「カヴァティーナ」(1927)

 

カセッラは、トリノに生まれたイタリアの作曲家です。1896年パリ国立音楽院に入学し、のちにフォーレに作曲を学びました。このため、フランス印象派の影響を受けていると思われますが、明快な新古典主義的作風を確立してイタリア音楽の指導者として活躍しました。作品は、交響曲からピアノ曲、オペラ、歌曲など多岐にわたります。

 

「小管弦楽のためのセレナード」は、クラリネット・ファゴット・トランペット・ヴァイオリン・チェロの五重奏のために書かれた「5つの楽器のセレナード」から、小管弦楽のために編曲した版です。第4曲「カヴァティーナ」は、オリジナルではヴァイオリンとチェロの二重奏、小管弦楽版では弦楽合奏のために書かれています。三部形式による小さな作品ですが、舞い上がっては舞い降りる美しい主題を持っています。短い序奏の後に立ち上がるこの主題は、繰り返される都度和声を変えながら毎回異なった経過により大きく発展していきます。静的な部分と動的な部分の対比の美しさ、複雑な和声を用いながらも透明度が高い響きなど、短い楽曲ながらも完成度が高い作品です。テンポや和声を変えながら表現されるこの作品の特徴は、マンドリン・オーケストラが得意とする表現でもあります。

(2006年8月、2012年8月:記)


セザール・フランク(1822~1890)

 

交響詩「プシュケ」より第4曲「プシュケとエロス」(1886~1888)

 

フランクは独創的な和声感や感性の流麗さにより近代フランスにおける重要な作曲家ですが、堅固な構成も特徴の一つです。気品と豊かな叙情をもった旋律は、あたかも大きな弧を描くかのようです。

 

交響詩「プシュケ」はギリシャ神話に基づく作品で、全6曲からなり後半には合唱も加わる大作です。美しい人間の娘プシュケに嫉妬した美の女神アフロディーテ(ヴィーナス)は、息子である愛の神エロス(キューピット)に下賎でつまらない男に恋させるよう命じます。しかし、プシュケの美しい寝顔に見とれて、エロスは慌てて恋の矢で自分自身を傷つけ恋に落ちてしまいます。そして、様々な試練の後にプシュケは神の仲間入りをし、改めて二人は夫婦になるのです。本日演奏する「プシュケとエロス」はこの2人の愛の音楽であり、フランクの特徴的なオルガンのような響きと、ワーグナー風の官能性にあふれた作品です。

(2004年8月、2012年8月:記)


湯浅 譲二(1929~)

 

「サーカス・ヴァリエーション(1954)」より (委嘱作品・初演) (2012)

 

第1曲:開幕序曲 Overture

第2曲:調教師 A Horse Trainer

第3曲:道化師 A Clown - Pierrot

第4曲:玉のり A Dancer on a Ball

 

(略)


ジャン・シベリウス(1865~1957)

 

付随音楽「クオレマ(死)」より「鶴のいる情景」(1906)、組曲「ペレアスとメリザンド」より (1905)

 

1904年、シベリウスはヘルシンキから30kmほど離れた田園地帯ヤルヴェンパーに移り住み、ここが生涯の住家となりました。この頃より、初期のロマンティックな気分と旋律を持った理解しやすい構造による作風から、独自の作風と内面的深さを増した中期、後期の作風へ変貌していくのです。

 

この転居をシベリウスに勧めたのは妻アイノだと言われていますが、彼女の兄アルヴィドは劇作家であり、1901年に戯曲「クオレマ(死)」を書いています。シベリウスは「クオレマ」上演のために6曲の音楽を書いており、後に第3景と第4景をつなげてコンサート用作品に改編しました。それが今回演奏する「鶴のいる情景」です。静かに進む弦楽合奏の中から、鶴の鳴き声が聴こえてきます。後の傑作、「第5交響曲」の白鳥の声を予感させる作品です。

 

ベルギーの劇作家メーテルリンクによる悲劇「ペレアスとメリザンド」は、作曲家のインスピレーションを刺激するのかフォーレの劇付随音楽、ドビュッシーの歌劇、シェーンベルクの交響詩など、多彩な傑作を生みだしました。この戯曲がスウェーデン語翻訳によりヘルシンキで上演されることになった際、付随音楽の作曲がシベリウスに依頼されたのです。劇上演後は、その中から9曲を選んで、曲順の変更などをほどこし演奏会用組曲として編集されました。本日は、この中から8曲を選んで演奏いたします。

 

第1曲:城門にて

・アルモンド国の城の門が開き、物語が始まります。堂々たる、前奏曲にあたる音楽です。

 

第2曲:メリザンド

・狩りに出て道に迷ったゴローは、泉のほとりで泣いている神秘的な少女メリザンドと出会います。ゴローはメリザンドを妻にすることを決め、宮殿へ連れて帰るのです。

 

第3曲:庭園の噴水

・ゴローの異父弟ペレアスは、メリザンドに出会います。盲人の眼を治す力を持つという庭園の噴水の前で、ペレアスと会っていたメリザンドはゴローからもらった指輪を弄んでいるうちに泉に落としてしまいます。

 

第4曲:3人の盲目の姉妹

・『黄金のランプを手にして塔を上っていく3人の盲目の姉妹・・・他の人と共に諦めずに塔を上っていく・・・』 不思議な歌を歌いながら、塔の窓辺に座ったメリザンドが、その長く美しい髪をすいています。塔から垂れたその髪に、もう感情が抑えられないペレアスが愛撫し、口づけをします。

 

第5曲:パストラーレ

・ゴローとペレアスは、死臭漂う城の地下洞穴から地上へ上がってきます。正午近くのまぶしい光を浴びながら、外気を精一杯に取り込みます。田園のすがすがしさを表現した、パストラーレです。

 

第6曲:糸を紡ぐメリザンド

・城が出られず自由がなくなったメリザンドは、暗がりの中で糸を紡いでいます。糸車の回転を表す音型(マンドリン・オーケストラ版ではギターが演奏)に、メリザンドの嘆きを感じさせる旋律が乗せられています。戯曲では噴水の場の次の場ですが、組曲化の際にここへ置かれました。

 

第7曲:間奏曲

・ペレアスは家を離れる決心をします。この場面に先立つ導入の役割を、この間奏曲が担います。そして、庭園の噴水のほとりで最後の夜、闇の中で二人は固く抱擁しあいます。しかし、ゴローに発見されてしまい、ペレアスは剣で刺し殺され、傷をつけられたメリザンドは逃げていきます。

 

第8曲:メリザンドの死

・子供を産んで、死の床につくメリザンド。ゴローは罪を確認しようとメリザンドに尋ねるも、明確な返事はされません。ひっそりと彼女は息を引き取る。メリザンドの遺体を残して、舞台に人影はなくなります。悲しさと美しさをたたえた音楽です。

(2012年8月:記)